三浦市の生活の足となっている路線バスに注目し、待ち時間に一休みできる野菜の無人販売スタンドを提案する。本体の材料はテント生地、農業用防風ネット、直径48.6mmの鋼管など。簡潔で、少し愛嬌のある「家具以上・建築未満」の無人販売スタンドである。営業時にはテント生地のカバーが開いて、日差しを避ける庇(ひさし)になる。フレームは本来は鋼管を素材とするが、今回のモックアップは木材で製作し、コーナー部分は三次元切削で加工されている。野菜の展示には、ハンドメイドの素朴な合板の台を用いる。
接客はAIを内蔵した球形のロボットが行い、代金もロボットに交通系ICカードをタッチして支払うことを想定している。
デザイン:関東学院大学 建築・環境学部 粕谷研究室 (粕谷淳司、荒木千菜、赤澤俊太、イ・ジュンホ)
製作:(株)モノコンセプションプロダクツ(光井歩)
木工:(株)ノスタモ
金物:(株)マーサーステンレス
縫製:BAG KITAHARA
展示台・椅子製作:関東学院大学 建築・環境学部 粕谷研究室
設計期間:2019.09 - 2019.12
製作期間:2019.12 - 2020.08
Focusing on the bus routes that have become a vital part of life in Miura, we propose a vegetable sales stand that also is a small shelter, where people can take a break while waiting. The main body is made of tent material, agricultural windbreak nets, and 48.6 mm diameter steel pipes, among other materials. It is a simple and charming "more than furniture, less than architecture" vegetable sales stand. The frame is supposed to be made of steel pipes, but this mock-up is made of wood, with the corners machined in three dimensions by CNC machining centers. The vegetable display is a hand-made, rustic plywood stand.
Customers will be served by a spherical robot with a built-in AI and paid for by touching a traffic IC card to the robot.
Design: Kasuya Lab. Kanto Gakuin University (Atsushi KASUYA, Chinatsu ARAKI, Shunta AKAZAWA, Junho LEE)
Production: Mono Conception Products Co.Ltd. (Ayumu MITSUI)
Woodworking: NOSTAMO Inc.
Metalworking: Masa Stainless Inc.
Sewing: BAG KITAHARA
Design Phase: 2019.09 - 2019.12
Production Phase: 2019.12 - 2020.08
関連ウェブサイト
岩手県の社会福祉法人が運営するワイナリーのプロジェクト。関東学院大学粕谷研究室では、2017年秋から2018年春までの期間で、本プロジェクトの基本構想・基本設計に大学院生が中心となって参加した。
敷地は新花巻駅の近く、幹線道路から奥まった小高い丘の上に位置し、周囲には「いぐね」と呼ばれる屋敷森に守られた散居集落に、なだらかな棚田が連なる美しい田園風景が広がっているが、農家の高齢化・後継者不足はこの場所も例外ではなく、耕作放棄される果樹園や棚田が、年々増えつつある。このような状況のなか、2016年11月に内閣府による構造改革特別区「花巻クラフトワイン・シードル特区」の認定を花巻市が受けたことから、市内の小規模な事業者でも酒類製造免許を取得できることになった。こうした制度を利用しながら、葡萄の栽培と果実酒の醸造を通じて障がい者の就労の場を作り、彼ら自身が地域の課題を解決する担い手、地域にとってかけがえのない存在として活躍できるような場所にすることが、このプロジェクトに課せられた使命である。
基本設計:カスヤアーキテクツオフィス(粕谷淳司・粕谷奈緒子・平木かおる)+関東学院大学 粕谷研究室(粕谷淳司・金林桂子・倉谷皓介・眞田重弥・長田宙大・早房巧・湯田直哉)
基本設計協力:有原設計室(有原寿典)
2030年のゼロエネルギー住宅(ZEH)を目指してアイデアを競う「エネマネハウス2015」のために、産学連携のチームで実施したプロジェクト。関東学院大学のGREEN HAT 2030は、ZEHを実現する上で最も重要な要素である「超高断熱化」と「太陽光発電」に対する、抜本的な提案である。
透明断熱材を利用して「光を透過する構造壁」と「断熱引戸」を作ることで、一般的に相反する超高断熱化と自然採光を両立し、また、これまでの太陽光パネルが発電以外に役立っていないことへの疑問から、パネルを夏季の日射熱遮蔽用ルーバーとしても機能させつつ、雨水を灌水して発電効率を上げることを試みた。
「新しい庭付き一戸建」を目指した本計画は、高価な設備機器や特殊な材料だけに頼らず、伝統的な知恵や、既に存在する技術の潜在的価値に注目し、それらを新たな発想で組み合わせた、2030年に向けた「普通の家」の提案である。
粕谷淳司
建築家。関東学院大学教授。カスヤアーキテクツオフィス一級建築士事務所代表。1971年東京都出身。東京大学工学部建築学科卒業、同大学院修了。株式会社アプル総合計画事務所(建築家:大野秀敏)に勤務後、2002年カスヤアーキテクツオフィス設立・主宰。人々の生活と空間デザインの関係を探求し、戸建住宅、集合住宅、商業施設、生産施設、オフィス、ランドスケープ、展示会場構成など、幅広い分野で創造的かつ実践的なデザインを行なっている。代表作に「TWIST」(新建築住宅特集2007:11他)、「日本女子大学目白キャンパス泉プロムナード」(ランドスケープデザイン2007:10他)、「青梅の家」(新建築住宅特集2009:03他)、「松本の家(K邸)」(新建築住宅特集2011:06他)、「安曇野の山荘」(JIA優秀建築選2016他)、「QUAD」(新建築2015:02)、「AREA PARK STUDIO」(GA HOUSES #144他)、「GREEN HAT 2030」(新建築2015:12他)など。主な受賞に、「建築学生設計大賞」(1996年)、「日本女子大学中央広場設計競技最優秀賞」(2005年)、「JIA優秀建築選」(2008、2016、2018年)、「Designing Window Awards the Best Design Prize」(2011年)、中部建築賞(2020年)など。主な著書に「現代住宅空間設計 日本建築師作品選」(上海辞書出版社)、「一生使える!住宅の高さ寸法」(株式会社エクスナレッジ)など。
2008〜2012年明治大学、2011〜2013年工学院大学にて非常勤講師として教鞭をとる。2013年より関東学院大学専任講師。2018年より准教授。2024年より教授。2022年ドレスデン工科大学客員研究員。
神奈川県横浜市金沢区六浦東1-50-1